現代の食卓に、これまでにない新しい風を吹き込む家庭用角型フライパン「極厚『角』フライパンCadono(カドノ)」。
このユニークなフライパンは、50年以上にわたり燕三条の地で培われてきた双葉工業株式会社の確かな技術と、株式会社コパ・コーポレーションの市場ニーズを見極める力、そして使う人の心に寄り添うこだわりから生まれました。
なぜ「角」という形状にたどり着いたのか。
そして、その裏にはどのような開発ストーリーと、開発者たちの熱い想いが隠されているのでしょうか。
フライパン本来の”真”のニーズへの挑戦
双葉工業株式会社は、長年にわたり主に問屋向けのOEM製品を製造し、日本の食卓や厨房を支えてきました。
ステンレスと鉄を中心とした家庭用雑貨の製造において、その技術力と品質は高く評価されていました。
しかし、激化する市場競争の中で、私たちは常に新たな価値の創造を模索していました。
特に近年は、中国製品との価格競争が激化し、以前は主力であった鉄製品の製造比率が大きく減少しました。
一方で、日本製に対する品質評価の高まりから、ステンレス製品の需要が増加し、現在はステンレス6割、鉄4割の製造比率となっています。
このような背景の中、私たちが改めて目を付けたのは、「フライパンの本来の用途は食材を美味しく調理する道具である」という、最も基本的でありながら見過ごされがちな本質でした。
ただ単に加熱するだけでなく、いかに食材の持つポテンシャルを最大限に引き出し、食卓に感動を届けるか?この問いが、商品企画の原点となりました。
既存の枠にとらわれず、これまでにない家庭用フライパンの可能性を探る中で、角型フライパンというアイデアが浮上しました。
しかし、家庭用としてこのような製品は前例が少なく、実現には高い技術力と、多くの試行錯誤が必要となることは明白でした。
開発プロセスと試行錯誤、常識を打ち破る
「極厚『角』フライパンCadono(カドノ)」の開発は、まさに挑戦の連続でした。
特に難しかったのは、「角をどう出すか」という点です。
当初、双葉工業株式会社では一般的なプレス加工を想定していました。
しかし、株式会社コパ・コーポレーションからの要望は、よりシャープで美しい「ベンダー加工」による角の表現でした。
ベンダー加工で角を出すことは、フライパンという大きな製品では非常に難易度が高く、何度も試作を繰り返す必要がありました。
技術面・デザイン面のこだわり
一般的なプレス加工では表現できない、シャープで美しい角を実現するため、双葉工業株式会社の熟練の職人たちがベンダー加工の限界に挑みました。
この加工方法は、一枚の金属板を折り曲げて成形するため、高度な技術と経験が求められます。
わずかな角度のずれも許されず、ミリ単位の調整が繰り返されました。
当初、双葉工業株式会社では製造効率を優先し、一般的な厚みの材料を考えていました。
しかし、株式会社コパ・コーポレーションの「耐久性と蓄熱性に優れた、ずっしりとしたフライパンにしたい」というこだわりから、最終的に3.2mm厚という非常に厚い鉄材料を採用することになりました。
この厚みは、家庭用フライパンとしては異例であり、調理時の熱ムラを抑え、食材に均一に火を通すことを可能にしました。
ハンドルの素材についても、当初はステンレスを提案していました。
しかし、「手になじみ、温かみのある素材にしたい」という株式会社コパ・コーポレーションの強い要望を受け、最終的に木製ハンドルに変更しました。
木製ハンドルは、調理中の熱が伝わりにくく、握りやすさも格段に向上します。
この変更は、機能性だけでなく、使う人の感性に訴えかけるデザイン性も両立させる重要な要素となりました。
困難・失敗とそこから得られた学び
開発の過程では、数多くの困難に直面しました。ベンダー加工の難しさから、試作段階では想定通りの形状にならなかったり、材料の厚みが増したことで、加工にかかる時間やコストが増大したりすることもありました。また、木製ハンドルと本体の接合部においても、強度とデザイン性を両立させるための試行錯誤が続きました。
特に印象的だったのは、フタとヘラの開発でした。フタはボールをひっくり返したアイデアから、ヘラを挟める取っ手の構造が生まれました。
このユニークな取っ手は、調理中にヘラの置き場に困らないという、使う人の目線に立った細やかな工夫です。
しかし、この構造を実現するためには、金型の設計から製造まで、これまでの常識を覆す発想と技術が必要でした。
ヘラについても、フライパン本体の角の角度にぴったり合うよう、クライアントの強いこだわりが反映されています。
開発チームの視点・声
双葉工業株式会社は、今回の開発についてこう語ります。
「私たちはこれまで、問屋さんの要望に応えるOEM製造が主でした。今回の角型フライパンの開発では、株式会社コパ・コーポレーションの『こんなものが作りたい』という強い熱意と、消費者の視点に立った細部へのこだわりに、私たち自身が多くの刺激を受けました。時には難しい要望もありましたが、それに応えることが、私たちの技術をさらに高める機会になると信じて取り組みました。彼らのアイデアを具現化するために、持てる金型や加工技術を最大限に提供し、より良い製品作りを目指しました。」
「燕三条のブランドイメージは、先代たちが小さな仕事にも真剣に取り組んできた姿勢から生まれたものです。顧客の難しい要望にも応え、高品質な製品を作り上げてきた長年の積み重ねが信頼を築き上げてきました。
今回の極厚『角』フライパンCadono(カドノ)の開発もまた、その精神を受け継ぐものです。職人の数は減少傾向にありますが、私たちは『価値ある製品を創造する』という理念のもと、これからも技術を磨き、新たな挑戦を続けていきたいと考えています。」
他製品との差別化
3.2mm厚の鉄が生み出す高い蓄熱性。家庭用としては異例の厚みを持つ3.2mm厚の鉄材は、一度温まると冷めにくく、食材の芯まで均一に熱を伝え、美味しく仕上げます。ステーキは外はカリっと香ばしく、中はジューシーに。野菜はシャキシャキとした食感を保ちながら、食材本来の旨みを引き出します。
手にしっくりと馴染む木製ハンドルは、調理中の熱さを感じさせず、安心感を提供します。使い込むほどに風合いが増し、キッチンに温かい彩りを添えます。
細やかな工夫から生まれたフタの取っ手は、調理中にヘラの置き場に困らないという実用性を兼ね備えています。
これにより、調理スペースを清潔に保ち、効率的な作業をサポートします。
「Cadono(カドノ)極厚『角』フライパン」は、一般家庭用として同様のコンセプトで製造された例がない、まさに他に類を見ない存在です。
板厚1.6mm程度の類似製品はアウトドア向けに製造したこともありますが、3.2mm厚の鉄材と木製ハンドルを組み合わせたこの家庭用角型フライパンは、市場に流通している他の製品とは一線を画します。
それは単なる調理器具ではなく、日々の食卓を豊かにする「体験」を提供するものです。
ブランドとしてのメッセージと展望
双葉工業株式会社は、株式会社コパ・コーポレーションとの共同開発により、「Cadono(カドノ)極厚『角』フライパン」を通じて、「価値ある製品を創造する」という私たちの理念を具現化しました。
それは、ただ顧客の要望に応えるだけでなく、その先にある消費者のニーズを深く洞察し、使い手の心を豊かにする製品を世に送り出すことです。
燕三条の地で培われた確かな技術と、開発者たちの妥協なきこだわりが詰まった「Cadono(カドノ)極厚『角』フライパン」は、日本のものづくりの真髄を伝える、新たなブランドの象徴となるでしょう。
未来へつながる物語
「Cadono(カドノ)極厚『角』フライパン」の誕生は、双葉工業株式会社にとって新たな挑戦の第一歩です。
今後は、この角型フライパンを皮切りに、株式会社コパ・コーポレーションと共に「Cadono」のシリーズ展開を目指していきます。
サイズ展開はもちろんのこと、お客様の声に耳を傾けながら、より多くの家庭で愛される製品へと進化させていく予定です。
私たちは今後も、家庭用製品の製造を継続しつつ、チタンやアルミなど様々な素材の活用を検討し、製品の幅を広げていきたいと考えています。物が売れない時代だからこそ、柔軟に新しい素材や分野に対応していく必要があると私たちは信じています。家庭用品以外では、調味料ラックなど、未挑戦の製品にも注力していく意向です。
「Cadono(カドノ)極厚『角』フライパン」に込められた私たちの想いは、単に料理をするためだけのものではありません。
それは、日々の暮らしに豊かさをもたらし、家族や大切な人との食卓を囲む喜びを深めるための道具です。このフライパンが、皆さんのキッチンに新たな発見と、心温まる時間をもたらすことを願っています。